緊急避難的仮設ブログ
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ある日の「出生の秘密を知った人々」
2007年03月12日 (月) | 編集 |
 その日、橘行弘は偶然に知ってしまった重大な秘密を抱えて、暗い面持ちのまま自宅マンションのドアを開けた。
「お帰りなさい」
 ドアを開けると同時に笑顔で迎えるのは、極悪金融会社の社長にして愛猫を甘やかすあまりに躾けを完全に怠った六条成湫だ。
 世界一、自分と恋人にだけ甘い傍迷惑な男である。
「ユキ? どうしたんですか、仕事で何かあった?」
 そんな成湫は行弘の沈んだ表情に気付くなり、猫を抱いたままオロオロし始める。
「ハッ、ま、まさかユキ、お腹が痛いんですか?それとも頭?」
 大変だ、医者を、いやその前に大家だ、と一人で勝手に騒いで携帯を取り出した成湫に、淡々と鍵を閉めた行弘はため息を吐く。
「ど、どうしたんですかユキ、まさか………早く俺が欲しい?」
 これ以上ないほど狼狽え、次の瞬間にはパッと花が綻ぶような笑顔になった成湫に、行弘はもう一度ため息を吐くと首を振った。
「おまえは脳天気でいいな、………俺はこんなに悩んでるのに」
 上着や鞄を成湫へ渡し、行弘はネクタイを緩めながらソファへ腰を下ろすと苦々しく眉間に皺を寄せる。
「悩んでる?」
 素早く冷えたビールを差し出しながら、成湫は双眸をキラリと煌めかせた。悩ませた相手に対する報復が脳内へ高速で駆け巡る。
「まあいい、とりあえずそこ座れ、………ニャオ、おまえもだ」
 ソファへ座ったままビールを煽り、指示した行弘に成湫と猫は
サッと床へ正座する。もちろん右手には灰皿をスタンバイだ。
「………なんで床に正座してるんだ?」
 あまりに自然な舎弟体制に首を傾げた行弘に成湫も首を傾げる。
「まあいい、それより俺は…………さっき重大な事実を知った」
 深刻な顔付きで声を潜める行弘に、成湫も神妙な面持ちで頷く。
「白い猫だ、大家さんところの高そうな、あの澄ました美人の」
 亀吉とかいう、滅多にいない美人猫、と行弘は重々しく告げた。
「あの性格の悪いメス猫が、ユキに何かしでかしたんですね?」
 キラリと瞳を輝かせた成湫の脳内では大変なことになっている。
「違う、しでかしたのはニャオだ、……あの猫、腹がデカイ」
 どう見ても妊娠してる、という言葉に成湫は膝の愛猫を見た。
「おまえも見ただろ、ニャオがあの猫に乗ってカクカク……っ」
 カクカク腰を動かしてるのを見ただろう、と言った行弘は子の不祥事を前に取り乱す父親のような表情をしている。
「俺は、俺は大家さんになんて言って謝ったらいいか………!」
 うちのニャオに限ってこんなこと、と顔を手で覆った行弘に、成湫は真剣な表情で告げた。
「ユキ、生まれてみなければ父親がこの子だとはバレません」
 あとは軽くシラを切り通せば、という成湫の言葉は途切れる。
「馬鹿野郎、俺たちでニャオの子供を守るしかないだろ!」
 その一言で、壮大な子猫出産プロジェクトは始まりを告げた。

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