緊急避難的仮設ブログ
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ある日の「イイヨ!」な人々
2013年11月04日 (月) | 編集 |
◇幸せな二人の場合◇
 雨が降ったり止んだり晴れてみたり。そんな中途半端な天候の連休最終日。
「ユキ、今日11月4日は何の日か知ってますか?」
 ソファへ腰掛けた恋人の身体を抱き寄せながら、六条成湫は甘い声で問い掛けた。
「今日? 楽天の優勝セールが始まる日か?」
 ニャオのオモチャ買ってやらないと、と閃いてしまったのは抱き寄せられた非番の警部補、橘行弘だ。
「いいえユキ、今日は一年で一番寛大な心になれる日」
 イイヨ!の日です、と成湫はグッと親指をサムズアップする。「いいよの日?」
 なんだそれ、と首を傾げる行弘は不思議そうではありながらも興味を抱いたようだ。
「そう、どんなお願いや我儘にも笑顔でイイヨ!と」
 答えることで世界の幸福度が上がるという素晴らしい日です。
そんな成湫の説明を、素直に信じるのは行弘だけだ。
「なるほど、いいよって言って貰えたら誰でも嬉しいよな」
 納得したのか、膝に載せた猫に「ニャオもいいよって言ってくれるか?」と楽しそうに尋ねている。
「じゃあユキ、俺の我儘にイイヨ!って言ってくださいね」
 イイヨ以外は禁止だよ、と甘えたように頬を擦り寄せてくる成湫に笑って行弘は「いいよ!」と親指を立ててやった。
「まず、俺のことギュッと抱きしめて頬にキスしてください」
 囁くような声に一瞬躊躇って、それから行弘は「いいよ」と答える。ギュッと抱きしめてキスしたら成湫は酷く嬉しそうに微笑って行弘の頬へキスを返した。
「じゃあ、次はおでこにキスして………次は顎、笑わないで」
 お願いされるままに「いいよ」と返して、幸せそうな恋人の表情に行弘は笑ってしまう。
 まるで、幸せそうな黒猫みたいに見えるからだ。
「唇にも………ダメだよ、ユキったら笑ってばっかり」
 行弘が唇を押し当てる度に、成湫は返事をするみたいに同じ仕種でキスを返す。二人して笑いながら、いいよの応酬だ。
「お日様が出てる時間だけど…………ベッド、行こうよ」
 いいよ、という答えが返されるのがわかっていて、甘い声で告げる成湫は狡い。
 それ以外の答えを言わせないようにキスばかりするからだ。
「六条、…………今日はいいよの日だろ?」
 そんな我儘な唇を指で摘んで、行弘は飛びきり格好いい表情で成湫を睨んでやる。
「早く、おまえを全部俺に寄こせ」 返事は、と囁く声に成湫が返す言葉は一つしかない。いいよという甘い声は、重ねられた吐息に掠れてしまった。


◆幸せ?な二人の場合◆
 相手の我儘や要求を受け入れ、誰もが笑顔になることにより世界の幸福度が上がるという11月4日、イイヨ!の日。
 深夜近くになって隠しエレベーターからマンションの五階を訪れたのは、大家であり部屋主の恋人でもある黒坂乙彦だった。
「啓介、啓介、……………啓介、起きてください」
 ぐっすりと眠っていた恋人を情け容赦なく揺さぶり起こし、何の遠慮もなくベッドへ腰掛けた乙彦は不機嫌だった。
「乙彦…………どうした、何かあったのか?」
 寝起きの掠れた声で尋ねて、無意識にか本能的にか乙彦の手を引いてベッドへ招き入れようとするのは苅谷啓介だ。
「許可なく触らないでください、図々しい」
 ビシッと啓介の手をはね除けて乙彦は高らかに宣言する。
「俺は今機嫌が悪い、俺の幸福度を上げてください」
 今日はイイヨの日だ、イイヨ以外の返事は受け付けない、と言い放った乙彦に、啓介は仕方がないなと苦笑して頷いた。
 機嫌が悪い乙彦が自分に甘えているのかと思ったのだ。
「では、この白紙委任状に署名と捺印をお願いします」
 サッと差し出された書類とペンに、断ろうとした瞬間最高潮に機嫌が悪い乙彦が無言でプレッシャーを掛けてくる。
「う、いや、その………………………イイヨ」
 言った途端ペンを握らされ、印鑑の代わりに拇印をキッチリ押させられて親指が朱肉の赤に染められた。
「次、このブラックカード貰っていいですか、いいですよね」
 恐ろしく据わった目でジーッと見つめられて啓介は小さく、消え入るような声で「イイヨ」と呟いた。
「じゃあ次、俺のために大声で歌いながら成湫さんの部屋から猫ちゃんを誘拐してきてください」
 今日はあの子がいないと眠れない、と寂しそうな調子で言い出した辺りで啓介はようやく乙彦の異変に気付いた。
「乙彦…………おまえ、まさか酔ってるのか?」
 まさかと思いながら尋ねた啓介に、「イイヨ以外は受け付けません、黒猫万歳!」と叫んで乙彦はバタリと倒れてしまう。
「お、乙彦? 乙彦…………俺と結婚してくれ!」
 そんな啓介の一世一代の告白に、イイヨ、という声が乙彦の唇から返されることはなかった。


☆おまけ☆
「ニャオ、今日は全部イイヨって答えろよ、幸せになれる」
 行弘は笑顔で最愛の黒猫を抱きしめた。
「ニャオ、抱っこ」
「ニャオ、チューは?」
「ニャオ、昼寝しような」
「ニャオ、あ~んは?」
 そんな行弘と黒猫の蜜月は唐突に終わりを告げる。
「ニャオ、俺と風呂に……………逃げやがった!」
 成湫は黒猫の風呂嫌いに心から感謝したという。

イイヨ!で世界をハッピーに☆happy Jgarden.


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